1. Ryzen 5 4500の正体とスペック:なぜ「安い」のか?
まず、Ryzen 5 4500の立ち位置を理解する必要があります。このCPUは、コードネーム「Renoir(ルノアール)」をベースにした「Renoir-X」という設計です。元々はノートPC向けに開発されたチップから内蔵グラフィックス機能を無効化し、デスクトップ向けに転用したという特殊な経緯を持っています。
| 項目 | スペック |
| アーキテクチャ | Zen 2 |
| コア / スレッド | 6コア / 12スレッド |
| 定格 / ブーストクロック | 3.6GHz / 4.1GHz |
| L3キャッシュ容量 | 8MB |
| TDP | 65W |
| プロセスルール | TSMC 7nm |
| PCIe バージョン | PCIe 3.0 |
| Windows 11 | 対応済み |
注目すべきは「L3キャッシュの少なさ」
Ryzen 5 4500の最大の特徴であり弱点は、L3キャッシュがわずか8MBしかないことです。同じZen 2世代のRyzen 5 3600は32MB、後継のRyzen 5 5500は16MB、5600は32MBを搭載しています。
L3キャッシュはCPUがデータを一時的に蓄えておく「作業机」のようなもので、これが少ないと、特にゲームにおいてフレームレートが伸び悩む大きな要因となります。
2. 2025年における性能評価:用途別の実力
2025年のソフトウェア環境において、Ryzen 5 4500がどれほど動くのかを具体的に見ていきましょう。
① 一般事務・ビジネス・学習用途:【極めて快適】
Officeソフト(Word, Excel, PowerPoint)の利用、ZoomやTeamsを使ったWeb会議、ブラウザでのタブの多用といった用途であれば、2025年でも全く問題ありません。6コア12スレッドという構成は、事務作業においては十分すぎるほどのマルチタスク性能を持っています。YouTubeの4K動画視聴なども、適切なグラフィックボード(GT 1030やRX 6400など)と組み合わせればスムーズです。
② ゲーム性能:【エントリークラス・設定次第】
ここが最も評価が分かれるポイントです。
- 軽量級ゲーム(Valorant, CS2, League of Legends)
144fps以上の高リフレッシュレートを安定させるのは、キャッシュの少なさが災いしてやや厳しい場面もありますが、60〜100fps程度で遊ぶ分には十分な性能です。
- 中量級ゲーム(Apex Legends, Fortnite, オーバーウォッチ2)
フルHD・低〜中設定であれば、平均100fps前後を狙えます。ただし、激しい戦闘シーンでの最低fps(カクつき)は、最新のRyzen 5 7500Fなどと比較すると目立ちます。
- 重量級・最新ゲーム(サイバーパンク2077, モンスターハンターワイルズ)
2025年の最新大作ゲームにおいては、Ryzen 5 4500は「最低限の動作」を保証するラインになります。特に、RTX 4060や5060といった最新のミドルレンジGPUと組み合わせると、CPUがボトルネックとなり、グラボの性能を60%〜70%程度しか引き出せないという事態が発生します。
③ クリエイティブ作業:【入門レベル】
-
動画編集: フルHDのカット編集やテロップ入れならこなせます。しかし、4K動画のエンコードや、複雑なエフェクトを多用する作業では、書き出し時間にかなりの忍耐が必要です。
-
イラスト・画像編集: PhotoshopやCLIP STUDIO PAINTでの作業は快適です。レイヤー数が数百枚に及ぶような巨大なキャンバスでない限り、ストレスは感じないでしょう。
3. Ryzen 5 4500のメリットとデメリット
メリット
- 圧倒的なコストパフォーマンス
新品でも1万円前後、中古なら数千円で手に入ることがあります。6コア12スレッドのCPUとしては、世界で最も安い部類に入ります。
- プラットフォームの汎用性(AM4)
普及しきった「AM4」ソケットを採用しているため、中古の安いマザーボードが豊富にあります。また、将来的にRyzen 7 5700X3Dなどにアップグレードする道も残されています。
- 発熱が非常に少ない
TDP 65Wですが、実消費電力はさらに低く、付属のリテールクーラーで十分に冷えます。静音PCや小型PCを組むのには適しています。
デメリット
- PCIe 3.0までの対応
最新のSSD(Gen4)や最新のグラフィックボード(PCIe 4.0 x8接続のモデルなど)の最大速度を引き出せません。
- ゲーミング性能の伸び悩み
前述のキャッシュ容量不足により、高性能なグラボを載せてもフレームレートが頭打ちになります。
- AV1エンコード非対応
最新の動画形式であるAV1のハードウェアエンコードをCPU側でサポートしていません(これはGPU側でカバー可能ですが)。
4. 将来性と「2025年の限界」
Ryzen 5 4500の「寿命」について考えます。
**Windows 10のサポート終了(2025年10月)**が目前に迫っています。Ryzen 5 4500はWindows 11に公式対応しているため、この点はクリアしています。OSの寿命という意味では、2025年以降も数年は安心して使い続けられるでしょう。
しかし、**「性能の寿命」**はすぐそこまで来ています。
2025年以降、AI処理を多用するソフトウェア(Copilot+ PC関連など)が増えてくると、専用のNPU(AI処理ユニット)を持たないRyzen 5 4500は、最新の「AI PC」としての恩恵を十分に受けられません。また、ゲームエンジン(Unreal Engine 5など)の高度化により、6コアであってもZen 2世代の古い命令処理能力では、カクつきを感じるシーンが確実に増えていきます。
5. 購入を検討している人へのアドバイス
「今、Ryzen 5 4500を選ぶべきか?」への回答は、あなたの予算によって決まります。
買っていい人
- 予算5万円〜7万円でゲーミングPCを新調したい人
この価格帯では、CPUに予算を割けません。4500+中古のGTX 1660 Superといった構成は、依然として「とりあえずゲームを始めたい」人には強力な選択肢です。
- サブ機やサーバー、親御さんへのプレゼントPCを作る人
安定性と安さが最優先される用途には最適です。
- 古いAM4マザーボードが余っている人
余剰パーツを活かして、とりあえず動く1台を作るには最高の素材です。
買うべきではない人
- 予算が10万円以上ある人
迷わずRyzen 5 7500FやCore i5-13400、あるいは最低でもRyzen 5 5600を選んでください。4500との性能差は、価格差以上に大きいです。
- 最新の対戦型ゲームで勝ちたい人
0.1秒の遅延やフレームレートの安定性が重要なFPSゲームでは、4500のキャッシュ容量不足が足かせになります。
6. 現在使っている人へのアドバイス
すでにRyzen 5 4500を使っている方は、慌てて買い換える必要はありませんが、以下の「限界サイン」に注目してください。
- グラボをRTX 40シリーズ等に買い換えた場合
グラボの性能を半分程度しか使えていない可能性があります。この場合は、CPUを「Ryzen 7 5700X」や「Ryzen 7 5700X3D」に載せ替えるだけで、PCを丸ごと買い換えることなく劇的な性能向上(AM4プラットフォーム最後の延命)が可能です。
- 動画編集でプレビューが重くなった場合
メモリを増やしても解決しない場合、CPUの処理能力不足です。
結論:2025年のRyzen 5 4500は「延命の王」である
Ryzen 5 4500は、2025年において「最強」ではありません。むしろ「最底辺の現役」と言えるかもしれません。しかし、その「最底辺」がWindows 11を動かし、フルHDでゲームをこなし、1万円以下で買えるという事実は驚異的です。
もしあなたが「最高」を求めず、「必要十分」を極限の安さで手に入れたいのであれば、Ryzen 5 4500は2025年以降もあなたの期待に応えてくれるでしょう。ただし、それは**「割り切り」という名の賢さ**を持ったユーザーにのみ許される選択なのです。

