RX 6400は2025年でも「特定の用途」なら最強。ただしAAAゲーム、お前はダメだ。

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【2025年版】Radeon RX 6400はまだ使えるか? 性能と限界を徹底レビュー

 

2025年秋。PCゲーム市場は、NVIDIAのRTX 50シリーズやAMDのRDNA 4世代が市場に出揃い、8Kゲーミングや高度なAIアップスケーリングが現実のものとなりつつあります。PlayStation 5 Proや次世代Xboxの噂も飛び交い、ゲームの要求スペックは天井知らずの上昇を続けています。

そんな中、2022年初頭に「エントリークラス」「省電力」「ロープロファイル」を武器に登場したAMD Radeon RX 6400は、今、どのような立ち位置にいるのでしょうか。

「中古で激安だけど、実際どうなの?」

「スリムPCに入れられるグラボを探してるけど、これでも戦える?」

「今RX 6400を使ってるけど、そろそろ買い替え時?」

この記事では、2025年という「今」の視点から、RX 6400の性能、具体的な用途、メリットとデメリット、そしてその将来性(あるいは、その限界)について、徹底的に解説していきます。

結論から言えば、RX 6400は**「用途を極端に限定すれば、比類なき価値を持つが、大多数のゲーマーにとっては力不足」**という、非常にピーキーな存在になっています。


 

1. RX 6400とは? 2025年における基本スペックの再確認

 

まず、RX 6400がどのようなGPUだったかをおさらいしましょう。

スペック項目 AMD Radeon RX 6400
アーキテクチャ RDNA 2 (Navi 24)
ストリームプロセッサ 768基
VRAM 4GB GDDR6
メモリバス幅 64-bit
Infinity Cache 16MB
接続インターフェース PCIe 4.0 x4
TDP (消費電力) 53W (補助電源不要)
フォームファクタ ロープロファイル対応モデル多数
メディアエンジン AV1デコード非対応

H.264/H.265エンコード非対応

2025年の視点で見ると、このスペック表にはいくつかの致命的な弱点と、唯一無二の強みが混在しています。

  • 強み: 53WというTDPとロープロファイル対応。これは今なお、スリムPCやメーカー製PCのアップグレードにおいて最強の選択肢の一つです。補助電源が不要なため、300W程度の非力な電源ユニットでも動作します。
  • 弱点1 (VRAM): 4GB GDDR6。2025年において、これはもはや「ゲーム用」としては最低ラインを大きく下回っています。最新のAAAゲームは1080p(フルHD)の最低設定ですら6GB~8GBを要求することが当たり前になりました。
  • 弱点2 (PCIe): PCIe 4.0 x4。x4(4レーン)という接続方式が最大の罠です。PCIe 4.0対応のマザーボード(B550/X570/B650/X670など)では問題ありませんが、いまだに多くのユーザーが使用しているPCIe 3.0環境(Intel第10世代以前、Ryzen 3000Gなど)では、帯域幅が半分になり、性能が20%~40%も低下します。
  • 弱点3 (メディア): AV1デコード非対応。2025年現在、YouTube、Netflix、Twitchなどの主要プラットフォームはAV1コーデックへの移行を完了しています。RX 6400はこれをハードウェアで再生支援できないため、4K動画の再生などでCPUに高負荷がかかります。さらに、ゲーム配信や録画に必須のH.264/H.265エンコード機能すら省略されています。

 

2. 2025年時点でのゲーム性能:何ができて、何ができないか?

 

では、実際のゲーム性能はどうでしょうか。2025年の基準で評価します。

 

📈 快適に動作するゲーム

 

  • 軽量eSports系(Valorant, CS2, Apex Legends, LoLなど)
    • 1080p / 低~中設定: 100fps以上を維持できるものが多く、競技プレイにも十分対応可能です。RX 6400が最も輝く分野です。
    • Apex Legendsでも、設定を大きく妥協すれば平均60fps以上を狙えます。
  • インディーゲーム / 比較的古いゲーム
    • 『Hades II』『Stray』『Hollow Knight: Silksong (仮)』などのインディーゲームは、多くが1080p / 高設定で60fpsを維持できます。
    • 2020年頃までのAAAゲーム(例:『モンスターハンター:ワールド』『SEKIRO』)も、設定を調整すれば1080p / 60fpsで快適に遊べるでしょう。

 

📉 厳しい・プレイ困難なゲーム

 

  • 2023年~2025年のAAAゲーム(『Starfield』『Alan Wake 2』『Cyberpunk 2077 (Ver 2.0以降)』『GTA6 (仮)』など)
    • 1080p / 最低設定: これがスタートラインです。
    • VRAM 4GBの壁: テクスチャ設定を「低」にしてもVRAMが溢れ、頻繁にカクつき(スタッタリング)や、テクスチャの読み込み遅延(粘土のようなグラフィック)が発生します。
    • FSR 3の活用: AMDのアップスケーリング技術「FSR 3」の助けを借りれば、フレームレートを「描画上」は引き上げることができます。FSRをパフォーマンスモード(内部解像度540p)にして、ようやく平均30fps~45fpsを目指せる、というのが現実です。60fpsでの安定動作はほぼ不可能です。

VRAM 4GBの現実

2025年において、VRAM 4GBは「ゲームが起動しない」あるいは「起動してもまともにプレイできない」レベルのボトルネックとなっています。ゲーム側が要求する最低VRAMが6GBや8GBに設定されている場合、RX 6400では起動すら拒否されるケースも増えています。


 

3. 用途別:RX 6400は2025年に「何に」使えるのか?

 

性能を踏まえ、具体的な活用シーンを評価します。

 

🟢 最適な用途 (A+評価)

 

  1. スリムPC・メーカー製PCのアップグレード
    • Dell OptiplexやHP ProDeskのような、電源が貧弱で拡張スロットもロープロファイル専用、というPCに命を吹き込む「ほぼ唯一」の選択肢です。
    • 内蔵GPU(Intel UHD Graphicsなど)とは比較にならない描画性能を提供し、前述のeSportsやインディーゲームが遊べるようになります。
  2. 超・省電力セカンドPC / サーバー用
    • 消費電力がアイドル時も負荷時も極めて低いため、24時間稼働のホームサーバーや、ブラウザゲーム専用のセカンドPCに最適です。
    • 「とりあえず画面が映ればいい」という用途にはオーバースペックですが、中古価格がこなれているなら十分アリです。

 

🟡 条件付きで可能な用途 (C評価)

 

  1. 動画視聴・Webブラウジング
    • 一般的なフルHD動画やWeb閲覧は全く問題ありません。
    • **ただし、前述の通り「AV1デコード非対応」**が足を引っ張ります。2025年のYouTube 4Kストリーミングなどを再生すると、CPU使用率が跳ね上がる可能性があります。Core i3や古い世代のCPUと組み合わせている場合、動画再生がカクつく場面も出てくるでしょう。
  2. eSports専用ゲーミングPC
    • ValorantやCS2専用機と割り切るなら、今でも十分な性能です。
    • ただし、それは**「PCIe 4.0環境を持っている」**ことが前提です。

 

🔴 不向き・不可能な用途 (F評価)

 

  1. 新作AAAゲーミング
    • 完全に力不足です。VRAM 4GBの壁が全てを台無しにします。「動けばラッキー」レベルであり、「快適」には程遠い体験となります。
  2. ゲーム配信・動画編集
    • RX 6400はハードウェア・エンコーダー(H.264/HEVC)を搭載していません。
    • これは、OBSなどの配信ソフトでGPUエンコードが使えないことを意味します。CPUエンコード(x264)に頼ることになり、ただでさえ低いゲーム性能がさらに低下し、まともな配信は不可能です。動画編集の書き出しも絶望的に遅くなります。
  3. AI・機械学習
    • VRAM 4GBでは、Stable Diffusionなどの画像生成AIも、ローカルで動かすのは非常に困難です(最低でも8GB、推奨12GB以上)。

 

4. 2025年視点でのメリットとデメリット

 

RX 6400の「今」を、メリット・デメリットの形で整理します。

 

✅ メリット

 

  1. 圧倒的な省電力性(TDP 53W)
    • 補助電源が一切不要です。これは2025年の最新GPU(アイドル時ですら50Wを超えるものがある)と比較して驚異的な数値です。電源ユニットの容量を一切気にせず搭載できます。
  2. ロープロファイル対応
    • スリムPCに搭載できる、まともな性能を持つGPUとしては、中古市場を含めても依然として貴重な存在です。競合となるIntel Arc A310やNVIDIA RTX A2000 (業務用) などもありますが、入手性や価格でRX 6400が優位に立つ場面は多いです。
  3. 中古市場での価格
    • (2025年秋の想定)新品の流通はほぼ終了し、中古市場では数千円程度(例: 5,000円~8,000円)で取引されている可能性が高いです。この価格で「eSportsが遊べる」GPUが手に入るのは大きな魅力です。
  4. FSR 3対応
    • RDNA 2アーキテクチャであるため、最新のアップスケーリング技術「FSR 3」(およびフレーム生成)に対応しています。これにより、VRAMが許す限りは、旧世代のGPUよりも高いフレームレートを「見かけ上」作り出すことが可能です。

 

❌ デメリット

 

  1. 絶望的なVRAM容量(4GB)
    • 2025年においては、これが最大の欠点です。ゲームのテクスチャデータを保持しきれず、パフォーマンスの深刻なボトルネックとなります。
  2. 貧弱なメディアエンジン(AV1非対応・エンコーダ非搭載)
    • ゲームだけでなく、動画視聴(AV1デコード)やクリエイティブ作業(エンコード)も苦手です。「グラフィックボード=動画も快適」という常識が通用しません。これはNavi 24というコストカット最優先のチップを使っている宿命です。
  3. PCIe 3.0環境での致命的な性能低下
    • RX 6400はPCIe 4.0の「x4レーン」で接続されます。これは、PCIe 3.0スロットに挿した場合、「PCIe 3.0 x4」という、PCIe 4.0 x4の半分の帯域幅で動作することを意味します。
    • VRAMが4GBと少ないため、GPUは頻繁にメインメモリ(DDR4/DDR5)にデータを読み書きしに行きます。この「通り道」が細い(PCIe 3.0 x4)と、深刻なデータ詰まりが発生し、性能が激減します。
    • もしあなたのPCがPCIe 3.0(Intel第10世代以前など)なら、RX 6400の性能は半分近くまで落ち込むと考えた方が良く、絶対に選ぶべきではありません。

 

5. 将来性と限界

 

 

将来性:ほぼゼロ

 

きっぱりと言いましょう。RX 6400に将来性はありません。

2022年の登場時点で、すでに多くの機能が省略された「延命措置」的な製品でした。2025年現在、その役割は「スリムPCへの最後の救済」のみに残されています。

今後登場するゲームは、さらにVRAMを要求し、AV1コーデックへの依存度を高めていきます。RX 6400の立場は、時間とともに厳しくなる一方です。AMDのドライバサポートも、RDNA 2世代は徐々にレガシー扱いへと移行していくフェーズに入っています。

 

限界:4GBのVRAMとPCIe x4の呪縛

 

RX 6400の限界は、GPUコアの計算能力以前に、VRAM 4GBPCIe x4という物理的な仕様によって定められています。FSR 3のような技術でフレームレートを水増しできても、テクスチャが読み込めない、データ転送が詰まる、という根本的な問題は解決できません。


 

6. 購入を検討している人へ (2025年秋)

 

もしあなたが今、中古市場などでRX 6400の購入を検討しているなら、以下のフローチャートで判断してください。

  1. あなたのPCはスリムPC(ロープロファイル専用)ですか?
    • YES → 2へ
    • NO購入非推奨。 通常サイズのPCなら、中古のRX 6600 (VRAM 8GB) や Intel Arc A580 / A750 を探すべきです。価格が多少高くても、得られる体験は雲泥の差です。
  2. あなたのPCのマザーボードは「PCIe 4.0」に対応していますか?
    • YES (B550/X570/B650/X670, Intel 500番台チップセット以降) → 3へ
    • NO (PCIe 3.0) → 購入非推奨。 性能が激減します。内蔵GPUで我慢するか、PC自体の買い替えを推奨します。
  3. 主な用途はValorantやCS2、ブラウザゲームですか? 新作AAAゲームを遊びたいですか?
    • eSports / 軽作業のみ購入OK。 あなたのニーズに合致する、安価で省電力な最良の選択肢の一つです。
    • 新作AAAゲームが遊びたい購入非推奨。 100%後悔します。スリムPCであっても、ゲームを諦めるか、PCケースごと買い替えるべきです。

 

7. 現在RX 6400を使っている人へ

 

すでにRX 6400を運用している方は、その「使いこなし」と「引き際」が重要です。

 

延命措置:まだ使い続けるために

 

  • FSR 3を徹底活用する: 対応ゲームでは、FSRを「パフォーマンス」や「ウルトラパフォーマンス」に設定し、フレームレートを稼ぎましょう。画質は犠牲になりますが、動作は軽くなります。
  • テクスチャ設定は「低」一択: 何よりもVRAM 4GBの壁を越えないことが重要です。ゲーム設定を開いたら、まず「テクスチャ品質」を最低にしましょう。
  • 解像度を下げる: 1080p (1920×1080) が重ければ、900p (1600×900) や 720p (1280×720) に落とすことをためらわないでください。
  • PCIe 3.0環境なら…: もし今、PCIe 3.0環境でRX 6400を使っているなら、あなたのRX 6400は本来の力の6~8割程度しか出せていません。マザーボードをPCIe 4.0対応のものに交換すれば劇的に性能が向上しますが… おそらく、その予算でRX 6600を買った方が賢明です。

 

アップグレードの目安(買い替え時)

 

以下の症状が出たら、買い替え時です。

  • 遊びたいゲームの最低要求VRAMが6GBや8GBになり、起動すらしなくなった。
  • eSportsゲーム(Apexなど)ですら、アップデートで重くなり60fpsを維持できなくなった。
  • YouTubeやTwitchの再生(AV1)でCPUが悲鳴を上げ、PC全体の動作が重くなった。
  • ゲーム配信や動画編集を「ちょっとでも」やりたくなった。(エンコーダ非搭載のため)

RX 6400からのアップグレード先としては、中古のRX 6600 / 6600 XT / 6650 XT (VRAM 8GB)、または最新世代のエントリーGPU(RX 7600やRTX 4060など)が順当な候補となるでしょう。


 

まとめ:ニッチな需要に応える「玄人向け」GPU

 

2025年において、Radeon RX 6400は、もはや一般のゲーマーが選ぶべきGPUではありません。VRAM 4GB、PCIe x4、エンコーダ非搭載という数々の「縛り」は、現代のPC利用においてあまりにも厳しい足かせとなっています。

しかし、**「補助電源不要」「ロープロファイル対応」という2つの強みを必要とする、「メーカー製スリムPCの延命」**というニッチな市場においてのみ、今なお輝きを放つ唯一無二の存在です。

自分のPC環境と用途を正確に理解し、「PCIe 4.0環境」と「eSports・軽作業限定」という条件をクリアできるのであれば、中古で安価に手に入れたRX 6400は、あなたのPCライフをもう数年支えてくれる、小さくても強力な相棒となるでしょう。

それ以外の全ての人にとっては、2025年に手を出すべき製品ではない、というのが私の結論です。

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