【2025年徹底検証】RX 5600 XTは「限界」か「まだ現役」か? VRAM 6GBの壁と延命策

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2025年版:Radeon RX 5600 XTはまだ戦えるのか?【徹底レビュー】

2020年初頭、AMDは「FHD(フルHD、1080p)ゲーミングの覇者」として「Radeon RX 5600 XT」を市場に投入しました。RDNAアーキテクチャを採用し、優れた電力効率とFHD環境における圧倒的なコストパフォーマンスで、当時のゲーマーから絶大な支持を受けました。

あれから約5年。PCゲームの要求スペックは高騰を続け、VRAMは8GBが当たり前、12GB以上も珍しくなくなりました。レイトレーシングやAIによるアップスケーリング(DLSS/FSR)も前提となりつつあります。

そんな2025年現在、「RX 5600 XTは果たしてまだ現役で使えるのか?」

この記事では、RX 5600 XTの現在の性能を再評価し、用途別の実用性、メリット・デメリット、そして将来性を、5000文字を超えるボリュームで徹底的に分析します。

1. RX 5600 XTとは? – 基礎性能の再確認

 

本題に入る前に、RX 5600 XTがどのようなGPUだったかを振り返りましょう。

  • アーキテクチャ: 第1世代 RDNA
  • 製造プロセス: 7nm
  • ストリームプロセッサ数: 2304基
  • VRAM: 6GB GDDR6
  • メモリバス幅: 192-bit
  • 主な競合: NVIDIA GeForce RTX 2060 (無印), GTX 1660 Ti/Super

RX 5600 XTの最大の特徴は、上位モデルである RX 5700 と同じ GPUダイ(Navi 10)を使用しながら、一部のスペックを調整して価格を抑えた点にあります。特にVRAMが6GBであったことは、当時としてはFHD環境で十分でしたが、これが5年後の今、最大の足かせとなるとは、当時はまだ予想されていませんでした。

発売当時は、RTX 2060に肉薄、あるいは凌駕するラスタライズ性能を、より安価に提供したことで「1080pのスイートスポット」と高く評価されました。


 

2. 2025年現在のリアルな性能

 

では、2025年10月現在、RX 5600 XTはどれほどの性能を発揮できるのでしょうか。CPUはRyzen 5 5600やCore i5 12400Fなど、ボトルネックになりにくいミドルクラスと組み合わせた場合を想定します。

 

2-1. FHD (1080p) ゲーミング性能

 

RX 5600 XTが主戦場としていたFHD解像度。ここでのパフォーマンスが最大の焦点です。

A. eSports / ライト~ミドル級ゲーム 『Apex Legends』『Valorant』『Counter-Strike 2』『League of Legends』『Fortnite(パフォーマンスモード)』などのeSportsタイトルにおいては、設定次第で144fps~240fpsを狙うことも可能であり、全く問題なく「現役」です。 『原神』『パルワールド』『Elden Ring (上限60fps)』といった数年前の大ヒット作も、高設定~最高設定で快適に動作します。

B. 最新AAA(トリプルエー)級ゲーム ここが最大の難所です。2024年~2025年にリリースされた『Alan Wake 2』『Starfield』『Assassin’s Creed Shadows』『Call of Duty: Black Ops 6』などの最新タイトルでは、RX 5600 XTの限界が見え隠れします。

  • VRAM 6GBの壁: 最大のボトルネックです。これらのゲームはFHDであっても、高~最高設定では容易にVRAMを6GB以上消費します。VRAMが不足すると、テクスチャの読み込みが遅れたり(通称:粘土テクスチャ)、最悪の場合、ゲームがクラッシュしたり、激しいカクつき(スタッタリング)が発生します。 これを回避するためには、ゲーム内設定の「テクスチャ品質」を「中」または「低」に設定することを強く推奨します。
  • 現実的な設定とフレームレート: 最新AAAタイトルをFHDでプレイする場合の現実的な目標は、**「設定:低~中」+「AMD FSR (Quality または Balanced)」**の組み合わせで、平均40~60fpsを目指すことになります。 『Alan Wake 2』のような特に重いタイトルでは、FHD・低設定・FSR Qualityでも平均30fps台になる場面があり、「遊べる」と「快適」の間で評価が分かれるでしょう。
  • 技術的な壁 (メッシュシェーダー): RDNA 1.0アーキテクチャは、DirectX 12 Ultimateの主要機能である**「メッシュシェーダー」**にネイティブ対応していません。 『Alan Wake 2』の初期バージョンや『Indiana Jones and the Great Circle』など、メッシュシェーダーを必須(あるいは強く推奨)するゲームが登場しており、これらのタイトルではRX 5600 XTで起動できないか、著しくパフォーマンスが低下する可能性があります。これはドライバやゲーム側のアップデートで改善されることもありますが、アーキテクチャの根本的な限界であるため、今後の不安材料となります。

 

2-2. WQHD (1440p) および 4K (2160p)

 

  • WQHD (1440p): eSportsタイトルや『原神』のような軽いゲームであれば、設定を調整すれば60fps以上でプレイ可能です。 しかし、AAAタイトルではFHDですら苦戦するため、WQHDではFSRをPerformanceモードにしても30fpsの維持が困難なタイトルが増えます。VRAM 6GBの不足もFHD時よりさらに深刻化します。**WQHDでのAAAゲーミングは「非推奨」**です。
  • 4K (2160p): 完全に不可能です。 デスクトップ表示や動画視聴は問題ありませんが、ゲーミング用途としては全く適していません。

 

3. RX 5600 XTの「延命」技術 – FSRの活用

 

RX 5600 XTが2025年でも「ギリギリ戦えている」最大の理由は、AMDのアップスケーリング技術**「FidelityFX Super Resolution (FSR)」**の存在です。

FSRは、NVIDIAのDLSSとは異なり、特定のAIコア(Tensorコア)を必要とせず、幅広いGPUで動作するのが特徴です。RX 5600 XTのようなRDNA 1.0世代のカードでも、FSR 1, 2, そして最新の FSR 3 に対応(または対応ゲームで利用可能)です。

  • FSR 2/3 (アップスケーリング): 低い解像度(例: 720p)でゲームをレンダリングし、それをAI(FSR 2/3)または空間的(FSR 1)にFHD (1080p) へと賢く引き伸ばす技術です。 「FSR Quality」設定を使えば、画質の低下を最小限に抑えつつ、フレームレートを20%~40%向上させることが期待できます。最新AAAゲームをプレイする際の**「必須設定」**と言えるでしょう。
  • FSR 3 (フレーム生成 – Frame Generation): FSR 3の目玉機能であるフレーム生成は、描画したフレームと次のフレームの間に、AIが生成した「偽のフレーム」を挿入することで、フレームレートを劇的に(ほぼ倍に)引き上げる技術です。 公式にはRX 5000シリーズもサポート(あるいは動作可能)とされていますが、RX 5600 XTの性能では、入力遅延(ラグ)が増加する副作用が目立つ可能性があり、諸刃の剣です。 しかし、『Call of Duty: Warzone 3』などの対応タイトルでは、FSR 3(アップスケーリングのみ、またはフレーム生成込み)が有効に機能し、パフォーマンスを底上げしている例も報告されています。

 

4. メリットとデメリット(2025年視点)

 

5年が経過した今、RX 5600 XTの立ち位置は明確です。

 

🟢 メリット

 

  1. 圧倒的な中古価格の安さ 最大のメリットです。2025年現在、中古市場では非常に安価(想定:1万円前後、あるいはそれ以下)で取引されています。限られた予算で「とりあえずPCゲームが動く環境」を構築する際の選択肢にはなります。
  2. FHDのeSports・ライトゲームには十分すぎる性能 前述の通り、eSportsや数年前のゲームがメインであれば、今でも高フレームレートを維持でき、全く不満のない性能を持っています。
  3. FSRによる延命 FSRの存在により、最新ゲームにも(設定と画質の妥協は必要ですが)食らいついていけます。これはFSR非対応の古いGPU(例:GTX 10/16シリーズの一部)に対する大きなアドバンテージです。
  4. 良好なワットパフォーマンス(当時比) TDPは150W~160W程度(モデルによる)であり、現行のハイエンドGPUと比べれば遥かに省電力です。500W~550Wクラスの電源でも十分に運用可能です。

 

🔴 デメリット

 

  1. VRAM 6GBという致命的な限界 最大の弱点であり、買い替えを検討すべき最大の理由です。2025年のゲームにおいてVRAM 6GBは「最低ライン」であり、近い将来「起動条件未満」となるリスクが非常に高いです。
  2. 最新技術への非対応(レイトレーシング, メッシュシェーダー) ハードウェア・レイトレーシング(RT)には対応していません。また、メッシュシェーダー非対応により、今後プレイできないゲームが登場する可能性が具体化しています (4.1)。
  3. DLSS(特にフレーム生成)は利用不可 ライバルのRTX 2060はDLSS 2 (アップスケーリング) やDLSS 3 (フレーム生成、MOD利用含む) が使えるため、延命性能という点では差をつけられています。
  4. 中古のコンディション不安 発売から5年が経過しているため、中古品はマイニング上がりであったり、ファンやコンデンサが劣化している可能性があります。

 

5. 将来性と限界 – 2026年、RX 5600 XTは生き残れるか?

 

結論から言えば、「非常に厳しい」と言わざるを得ません。

2025年現在ですら、FHD・低設定・FSR併用でギリギリの戦いを強いられているAAAタイトルが多数あります。2026年以降に発売されるゲームは、現行コンソール(PS5/Xbox Series X)の性能を前提に開発がさらに進み、VRAM 8GBを「最低条件」とするゲームが増えることが予想されます。

RX 5600 XTの限界は、以下の2つの「壁」によって明確に定義されます。

  1. VRAM 6GBの壁: ゲームが起動しなくなる、またはテクスチャ設定を「低」以下にしないとまともに動作しなくなる。
  2. アーキテクチャの壁 (メッシュシェーダー): VRAMが足りていても、GPUが必須機能をサポートしていないため起動しない。

この2つの壁が、RX 5600 XTの「寿命」を決定づけることになります。


 

6. 【購入検討者向け】今、RX 5600 XTを買うべきか?

 

2025年10月現在、新規(中古含む)でRX 5600 XTを購入することは、以下の特定の場合を除き、強く非推奨です。

 

「買ってはいけない」人

 

  • 新作AAAゲームをFHD・中設定以上で遊びたい人。
  • WQHD解像度でゲームをしたい人。
  • レイトレーシングを体験したい人。
  • 「あと2~3年は戦いたい」と考えている人。

 

「買ってもいい」かもしれない人 (条件付き)

 

  • 予算が1万円以下など、極端に限られている人。
  • 用途がeSports(Apex, Valorant)や軽いゲーム(原神, LoL)に限定される人。
  • 数ヶ月後には必ず買い替える前提の「つなぎ」として割り切れる人。
  • (サブPC用など、メイン環境ではない用途)

 

購入時の代替案

 

もし予算がもう少しあるなら(例:1.5万~2.5万円)、中古の RX 6600 (VRAM 8GB)RTX 3060 (VRAM 12GB/8GB) を探すことを強く推奨します。 VRAMが8GB以上あり、アーキテクチャも新しいため、RX 5600 XTよりも遥かに「将来性」があります。新品であれば、RX 7600RTX 4060 がエントリー~ミドルクラスの選択肢となります。


 

7. 【現オーナー向け】RX 5600 XTから買い替えるべきか?

 

現在RX 5600 XTを使っている方にとっては、非常に悩ましい時期でしょう。

 

「まだ買い替えなくても良い」人

 

  • プレイするゲームがeSportsや数年前のAAAタイトルが中心の人。
  • FHD・中設定+FSRで、現在のゲーム体験(30~60fps)に大きな不満がない人。
  • PCの買い替え(CPUやマザーボード含む)を検討しており、GPU単体での交換を急いでいない人。

【延命措置】

  • FSR/RSRを積極的に活用する。 (RSRはドライバ側で強制的にアップスケールする機能)
  • テクスチャ設定は「中」以下を徹底する。
  • Windowsやドライバを最新に保つ。
  • CPUがボトルネックになっていないか確認する。 (例: Ryzen 5 3600あたりが相応)

 

「買い替えを強く推奨」する人

 

  • 新作AAAゲームをプレイした際、カクつき(スタッタリング)やテクスチャの遅延が頻発する人。
  • VRAM不足の警告やエラーに遭遇した人。
  • 「テクスチャ:低」の設定に我慢ができない人。
  • メッシュシェーダー必須のゲームが起動できず、悔しい思いをした人。
  • WQHD以上の高解像度モニターに買い替えた人。

 

買い替え先のおすすめ (2025年秋時点)

 

  • コストパフォーマンス(FHD~WQHD):
    • Radeon RX 7600 (XT)
    • Radeon RX 7700 XT
  • 性能と最新技術(DLSS/RT)重視:
    • GeForce RTX 4060 / 4060 Ti
    • GeForce RTX 4070 (Super)

 

結論:2025年、RX 5600 XTは「黄昏」の名機

 

Radeon RX 5600 XTは、間違いなく「FHDゲーミングの名機」でした。 2025年現在、その輝きは失われつつありますが、**「FHD(1080p)解像度」「eSports・ライトゲーム中心」「最新AAAは設定最低+FSRで妥協」**という3つの条件を受け入れられるならば、まだ現役で使い続けることは可能です。

しかし、VRAM 6GBの限界と、メッシュシェーダー非対応というアーキテクチャの限界は、もはや「延命措置」ではどうにもならない段階に達しつつあります。

新規での購入は(よほど安価で割り切った用途でない限り)推奨できません。 現オーナーの方は、自身のプレイ環境と不満点を照らし合わせ、「遊ぶゲーム」か「設定」のどちらかを妥協するか、あるいは新しいGPUへの買い替えを決断するか、その「黄昏時」を迎えていると言えるでしょう。

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