2025年、Radeon RX 550はまだ「使える」のか?【徹底検証】
2017年にエントリークラス(入門用)として登場したグラフィックボード「AMD Radeon RX 550」。発売から実に8年が経過した2025年10月現在、このグラフィックボードは果たして「まだ使える」のでしょうか?
中古市場では数千円という安価で取引されていますが、その性能は現代のPC環境においてどのような位置づけになるのか。この記事では、RX 550の2025年におけるリアルな性能、具体的な用途、メリットとデメリット、そして将来性について、徹底的に解説します。
これから購入を検討している方、そして現在も使い続けている方、それぞれに向けた具体的なアドバイスも盛り込んでいます。
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1. Radeon RX 550とは? 2025年から見た基本性能
まず、RX 550がどのようなグラフィックボード(GPU)だったのかを振り返り、2025年現在の視点でその性能を再評価します。
発売当時の位置づけ
RX 550は、AMDの「Polaris(ポラリス)」アーキテクチャ(GCN 4.0世代)を採用したエントリーモデルです。当時の最新ゲームを快適にプレイするためではなく、CPU内蔵グラフィックス(iGPU)よりも高性能な画面出力や、非常に軽いゲーム(LoLやCS:GOなど)をプレイすること、そして動画再生支援を目的としていました。
主なスペックは以下の通りです。
- アーキテクチャ: Polaris 12 (GCN 4.0)
- ストリームプロセッサ: 512基 (一部640基モデルも存在)
- VRAM (ビデオメモリ): 2GB または 4GB (GDDR5)
- バス幅: 128-bit
- 消費電力 (TDP): 約50W
- 補助電源: 不要 (スロットから供給される電力のみで動作)
2025年現在の性能評価:iGPUとの比較
2025年現在、RX 550の性能を語る上で避けて通れないのが、「最新のCPU内蔵グラフィックス(iGPU)との比較」です。
結論から言えば、2025年に新品で購入できる最新世代のCPU(特にAMD Ryzen 8000Gシリーズなど)に搭載されている内蔵グラフィックスは、RX 550の性能を凌駕しています。
- vs 最新iGPU (例: Radeon 780M / 8700G搭載iGPU): RDNA 3アーキテクチャを採用したこれらのiGPUは、RX 550の1.5倍~2倍以上の描画性能を持つことが多く、1080pでのライト~ミドル級ゲームを(設定次第で)プレイ可能です。RX 550は完全に敗北します。
- vs 少し前のiGPU (例: Intel UHD Graphics 770 / 第12~14世代Core i): これらと比較した場合、RX 550はまだ優位性を持っています。ゲーム性能においてはRX 550の方が明らかに強力です。
- vs 発売当時(2017年頃)のiGPU (例: Intel HD Graphics 630 / 第7世代Core i): RX 550がターゲットとしていた相手です。これらに対してはRX 550が圧倒的に高性能です。
この事実から、RX 550の2025年における役割は「古いPCの延命・アップグレード用」に限定され、「新規で組むPCに搭載する価値は(iGPUが強力な場合)ほぼ無い」ということが分かります。
2. 2025年におけるRX 550の具体的な用途
性能の立ち位置を踏まえ、2025年現在、RX 550が具体的にどのような用途になら「使える」のかを見ていきましょう。
🙆♂️ 推奨できる用途
1. 古いPC(iGPU非搭載・または非力なPC)の延命 これが最大の存在価値です。例えば、2010年代前半~中盤のPC(第2世代~第7世代Core iシリーズや、古いXeon、AMD FXシリーズなど)で、
- CPUに内蔵グラフィックスが無い
- 内蔵グラフィックスが古すぎてOS(Windows 11など)の表示すらもたつく
- マザーボードの映像出力端子が壊れた
といった場合に、RX 550は「画面を映す」という基本機能において非常に安価な解決策となります。
2. マルチモニター環境の構築 古いPCのオンボード出力ではモニター1台しか繋げない場合でも、RX 550(多くのモデルがHDMI, DisplayPort, DVIを搭載)を増設することで、2~3台のマルチモニター環境を容易に構築できます。 ただし、4Kモニターを複数接続して高リフレッシュレートで…というのは厳しく、あくまでFHD(1920×1080)解像度でのオフィスワークやブラウザ閲覧が快適になる、というレベルです。
3. 超軽量なPCゲーム 2025年基準で見ても「軽い」とされるゲームならプレイ可能です。
- 快適に動作する可能性が高い: 『League of Legends』『Valorant』『Minecraft』『Counter-Strike 2 (低設定)』『Among Us』、その他2Dインディーゲーム
- 厳しい or 動作しない: 『Apex Legends』『原神』(これらも設定を最低にすれば動く可能性はありますが、快適とは言えません)
4. エミュレーター用途 レトロゲーム(ファミコン、スーパーファミコン、プレイステーション1など)のエミュレーターを動かすには十分すぎる性能を持っています。
🙅♂️ 厳しい・推奨できない用途
1. 現代のAAAゲーム 絶対に無理です。 『Starfield』『Cyberpunk 2077 (Phantom Liberty)』『Alan Wake 2』など、2023年~2025年に発売されたゲームは、起動すらしないか、起動してもスライドショー状態になります。VRAMも性能も絶対的に不足しています。
2. 動画編集・AIイラスト生成 RX 550は動画のエンコード(書き出し)支援機能を持っていますが、その性能は現代の基準では非常に低速です。また、AI(機械学習)関連のタスク(Stable Diffusionなど)に必要な性能やVRAM(最低でも8GBは欲しい)も全く足りません。
3. HTPC (ホームシアターPC) ※要注意 動画再生支援はありますが、2025年において致命的な欠点があります。(詳しくは「デメリット」で後述します)
3. メリットとデメリット(2025年視点)
RX 550を今、あえて使うことの利点と、知っておくべき重大な欠点を整理します。
👍 メリット
1. 圧倒的な低消費電力 (TDP 50W) RX 550の最大の利点です。補助電源ケーブルが不要で、PCIeスロットに挿すだけで動作します。これにより、電源容量が小さい(250W~300W程度)メーカー製スリムPCや古いデスクトップPCにも増設できる可能性が非常に高いです。
2. ロープロファイル (Low Profile) 対応モデルの存在 DELLやHPなどのスリム型PCケースにも収まる、背の低い(ロープロファイル)ブラケットに対応したモデルが多数存在します。これは上記の低消費電力と並び、古いPCをアップグレードする上で最強の武器となります。
3. 中古価格の安さ 2025年現在、中古市場では状態にもよりますが3,000円~5,000円程度で入手可能です。「とにかく安く画面を映したい」というニーズには完璧に応えます。
4. 4GB VRAMモデルの存在 もし中古で探すなら、2GBモデルではなく4GBモデルを強く推奨します。2025年において2GBは、ブラウザでタブを大量に開くだけでも使い切ってしまう可能性があります。4GBあれば、ライトな用途での安定性が格段に向上します。
👎 デメリットと限界
1. 致命的な欠点:AV1デコード非対応 これが2025年においてRX 550を使う上で最大の障害です。
AV1 (AOMedia Video 1) とは、最新の動画圧縮規格です。
- YouTube: 4K動画や人気の高い動画で積極的に使用されています。
- Netflix: 高画質ストリーミングで使用されています。
- Twitch: 配信で使用が始まっています。
RX 550 (GCN 4.0) は、このAV1のハードウェアデコード(再生支援)に一切対応していません。
これが何を意味するかというと、YouTubeでAV1形式の動画を再生すると、GPU(RX 550)が処理できず、すべての負荷がCPUに集中するということです。 古いPC(例: 第4世代Core i5)にRX 550を載せた場合、YouTubeで4K動画を見ようとするとCPU使用率が100%に張り付き、動画がカクカクになったり、PC全体の動作が停止したりする可能性があります。
2025年現在、動画視聴はPCの最も基本的な用途の一つであり、その快適性が損なわれる可能性が高い点は、非常に大きなマイナスポイントです。
2. 絶対的な性能不足(ゲーム) 前述の通り、現代のゲームはプレイ不可能です。「FHD(1080p)で最低設定」という基準すらクリアできないゲームが大半です。
3. ドライバーサポートの将来性 RX 550が採用するGCNアーキテクチャは、AMDにとって非常に古い世代です。2025年現在、ドライバーアップデートは提供されていますが、最適化や新機能の追加は期待できません。いつ「レガシーサポート(セキュリティ修正のみ)」に移行してもおかしくない状況です。
4. 【購入検討者へ】2025年にRX 550を買うべきか?
「中古でRX 550を買おうか迷っている」という方へ、具体的な判断基準を提示します。
🛒 買っても良い人
- Core i7 (第7世代) 以前、または古いXeon/AMD FXを搭載したPCを持っている。
- そのPCの電源容量が非常に小さい (300W以下)。
- そのPCがスリムタワーケースである。
- ゲームは一切しない(しても2Dゲームや2010年頃のゲーム)。
- 動画はFHD(1080p)までしか見ない(AV1の負荷を避けるため)。
- 目的は「マルチモニター化」または「OSが起動しないPCの修理」である。
キーワードは「低消費電力」「ロープロファイル」「画面を映すだけ」です。
🏃♂️ 買うべきではない人
- これからPCを新規で組む人。 (絶対にやめてください。Ryzen 5 8600Gなどを買い、内蔵グラフィックスを使った方が100倍高性能で快適です)
- 少しでも良いからPCゲーム(Apex, 原神など)をしたい人。 (予算を上げ、最低でも中古のGTX 1650やRX 6400を探すべきです。これらはAV1デコードにも対応しています)
- 4K動画を快適に視聴したい人。 (AV1非対応が致命的です。Intel Arc A310/A380や、GeForce RTX 3050 (6GB)など、AV1に対応したエントリーGPUを推奨します)
- 第8世代Core iシリーズ以降のCPUを使っている人。 (内蔵グラフィックス(UHD 630/730系)でもAV1問題は解決しませんが、RX 550を増設する性能的メリットが薄いです。どうせ増設するなら、もっと上位のGPU(GTX 1660 Superなど)を検討した方が幸せになれます)
5. 【現役ユーザーへ】RX 550を使い続けるための道
「今、まさにRX 550を使っている」という方へ。今すぐ買い替える必要はありませんが、快適に使い続けるためのヒントと、アップグレードの「潮時」について解説します。
延命策と最適化
1. AV1対策:「h264ify」拡張機能の導入 ブラウザ(Chrome, Firefox, Edge)に「h264ify」や「enhanced-h264ify」といった拡張機能を追加してください。 これは、YouTubeに対し「AV1形式ではなく、古いH.264形式で動画を送ってほしい」と強制的にリクエストするものです。これにより、RX 550が持つH.264再生支援機能が有効になり、CPU負荷を劇的に下げることができます。 (※ただし、YouTube側がH.264版の動画を用意していない場合、再生できなくなったり画質が制限されたりする可能性もあります)
2. 4GB VRAMモデルであるかの確認 もしお使いのRX 550が2GBモデルの場合、4GBモデルに買い替える(中古で数千円の差)だけでも、ブラウザの多重起動や軽作業の安定性が増す可能性があります。
3. FSR (FidelityFX Super Resolution) の活用 非常に限定的ですが、RX 550は「FSR 1.0」および「FSR 2.0」に対応しています。もし『Cyberpunk 2077』や『F1 22』など、FSRに対応したゲームを「どうしても起動だけでもしたい」という場合、解像度を720pなどに落とした上でFSRを「パフォーマンス」設定にすれば、フレームレートが多少改善する可能性があります。(ただし、元が低すぎるため過度な期待は禁物です)
アップグレードを検討すべき「潮時」
以下の症状が出始めたら、GPU(あるいはPC全体の)買い替えを真剣に検討すべきサインです。
- ブラウザで動画を見ているだけでPCが固まるようになった。 (AV1が主流になり、h264ifyなどの対策が通用しなくなった時)
- OS(Windows)の動作自体が重く感じるようになった。 (将来のWindowsアップデートで、要求されるグラフィック性能が上がった時)
- 使いたいソフト(例: GIMP, Blenderの最新版)が「GPU非対応」と表示するようになった。 (ドライバーが古く、必要なAPIに対応できなくなった時)
- どうしても遊びたいゲームが登場した時。 (これが最大の理由です。RX 550では、2025年の新作は遊べません)
次のアップグレード先は?
RX 550(低消費電力・補助電源不要)からのアップグレードパスは、PCの電源容量によって決まります。
- [補助電源不要] の後継 (電源が弱いままの場合):
- GeForce GTX 1650 (GDDR6版): RX 550より格段に高性能で、補助電源不要モデルが多い。ただし中古価格はまだ高め。
- Radeon RX 6400: 性能はGTX 1650に近く、AV1デコードにも対応。ロープロファイルモデルも豊富。
- Intel Arc A310 / A380: AV1エンコード/デコードに対応。動画視聴や配信目的なら最強の選択肢。
- [補助電源OK] の後継 (電源交換も辞さない場合): 選択肢は無限に広がります。予算に応じて、RTX 4060やRX 7600などを選べば、世界が一変するでしょう。
6. 結論:RX 550は「ニッチな延命パーツ」である
2025年10月現在、Radeon RX 550を評価するなら、以下のようになります。
「ゲーミングGPU」としては完全に引退。しかし、古いスリムPCの電源容量を気にせず増設できる「マルチモニター対応の画面出力装置」としては、中古数千円という価格において未だに唯一無二の価値を持つ「ニッチな延命パーツ」である。
最大の弱点は「AV1非対応」という、現代の動画視聴環境とのミスマッチです。
もしあなたが、電源が弱く、内蔵グラフィックスも貧弱な古いPCを「ただ、あと数年、オフィスワークやWeb閲覧で使いたい」と願うなら、中古のRX 550 (4GBモデル) は最高の相棒になるかもしれません。
しかし、それ以外のほぼすべての人にとって、2025年にRX 550を選択する理由は、残念ながら見当たりません。内蔵グラフィックスの急速な進化が、RX 550のようなエントリーGPUの存在意義を過去のものとしたのです。
