【2025年版】Core i7-8700はまだ現役で使えるのか?その性能、寿命、そして選択の是非を徹底解説

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PCパーツの進化は日進月歩ですが、その歴史の中で「名機」と呼ばれるCPUがいくつか存在します。2017年に登場した第8世代Intel Coreプロセッサ、「Core i7-8700」もその一つです。

しかし、時は流れ2025年。テクノロジーの世界は大きく変わりました。Windows 10のサポート終了(EOS)が現実のものとなり、Windows 11への移行が必須となる中で、この「かつての名機」は果たして今でも通用するのでしょうか?

この記事では、Core i7-8700の購入を検討している方、そして現在使用中で買い替えを迷っている方に向けて、2025年以降の視点からその性能、用途、メリット・デメリット、そして将来性を徹底的に解説します。


第1章:Core i7-8700とは何だったのか?歴史的背景とスペック

1-1. 「4コア」時代の終焉と「6コア」の夜明け

Core i7-8700が登場した2017年後半は、CPU市場における大きな転換点でした。それまで長らく、メインストリームのCore i7といえば「4コア8スレッド」が常識でした。しかし、AMD Ryzenの登場による多コア競争の激化を受け、Intelが満を持して投入した第8世代(Coffee Lake)は、コア数を一気に1.5倍の「6コア12スレッド」へと引き上げました。

この変化は劇的でした。前世代のi7-7700Kと比較してもマルチスレッド性能が約40%向上し、実質的に「Core i7の定義を変えた」CPUと言えます。この「6コア12スレッド」という構成は、2025年現在でもミドルレンジの基準として機能しており、これがi7-8700が長寿命である最大の理由です。

1-2. 基本スペックのおさらい

改めて、i7-8700(無印)のスペックを確認しておきましょう。

  • アーキテクチャ: Coffee Lake-S (14nm++)

  • コア/スレッド: 6コア / 12スレッド

  • ベースクロック: 3.2GHz

  • 最大ターボブースト: 4.6GHz

  • キャッシュ: 12MB SmartCache

  • TDP: 65W

  • 対応メモリ: DDR4-2666

  • 内蔵グラフィックス: Intel UHD Graphics 630

特筆すべきは、最大4.6GHzという高いクロック周波数です。これにより、シングルスレッド性能(1つの処理をこなす速さ)も高く維持されており、古いアプリケーションやゲームでも快適に動作します。


第2章:2025年におけるWindows 11問題とi7-8700の立ち位置

2-1. Windows 11 正式対応の「境界線」

2025年10月、Windows 10のサポートが完全に終了します。これにより、世界中のPCユーザーがWindows 11への移行、あるいはPCの買い替えを迫られています。

ここでi7-8700が極めて重要な意味を持ちます。Microsoftが定めたWindows 11の最小システム要件において、Intel CPUは原則として**「第8世代以降」**がサポート対象となっているからです。

つまり、i7-8700は**「Windows 11を正規の方法で、安全に使い続けられる最も古い(=安価に入手できる可能性のある)ハイエンドCPU」**というポジションにいます。第7世代のi7-7700などは、性能的には十分でもWindows 11の要件(主にCPUモデル制限)に引っかかり、そのままではアップグレードできません。この「OSの壁」の内側にいるか外側にいるかが、2025年以降の中古市場価値を決定づけています。

2-2. セキュリティとTPM 2.0

i7-8700が搭載されるマザーボード(Intel 300シリーズチップセット)は、Windows 11が要求するセキュリティ機能「TPM 2.0」に対応しています(ファームウェアTPMとしてPTT機能を有効にする必要がある場合が多いですが、ハードウェア的には対応可能です)。

企業のセキュリティコンプライアンスや、個人のネットバンキング利用などを考えると、無理やり古いCPUにWindows 11を入れるよりも、正規対応しているi7-8700を使用する方が圧倒的にリスクが少なく、精神衛生上も好ましいと言えます。


第3章:実用性能検証(2025年基準)

では、具体的な用途においてi7-8700はどの程度使えるのでしょうか?現代の基準(第12世代~第14世代Core i3/i5)と比較しながら解説します。

3-1. 一般的な事務作業・Web閲覧・動画視聴

判定:【極めて快適 / オーバースペック】

Excel、Word、PowerPointなどのOffice作業、ブラウザでのタブの大量開き、YouTubeの4K動画視聴、ZoomやTeamsでのWeb会議。これらにおいて、i7-8700が力不足を感じることはまずありません。

現代のローエンドCPUであるCeleronやPentium(あるいはIntel Processor Nシリーズ)と比較しても、i7-8700のレスポンスは圧倒的に上です。メモリさえ16GB以上積んでいれば、2025年以降もこの用途で不満が出ることはないでしょう。企業の事務用PCとしては、あと3~4年は現役で戦えるポテンシャルがあります。

3-2. ゲーミング性能

判定:【ミドルロー~ミドルレンジ / フルHDなら現役】

ゲーマーにとって最も気になる点でしょう。結論から言えば、**「グラフィックボード次第で、フルHD環境なら十分戦える」**です。

  • RTX 3060 / RTX 4060クラスとの組み合わせ: i7-8700は、これらのミドルレンジGPUの性能を引き出すのに丁度良い、あるいはわずかにボトルネックになる程度の性能を持っています。

    • Apex Legends / VALORANT / Overwatch 2: 144Hz以上の高フレームレートを維持可能です。競技設定であれば240Hz張り付きは厳しいかもしれませんが、一般プレイヤーには十分すぎます。

    • Cyberpunk 2077 / Starfield: 最新の重量級AAAタイトルの場合、CPU使用率が100%近くに張り付く場面が出てきます。しかし、60fpsを目標とするなら十分プレイ可能です。

  • 最新世代(Core i3-12100など)との比較: 驚くべきことに、ゲーム性能(シングルスレッド重視)では、最新のCore i3(4コア8スレッド)に負ける場面があります。最新のアーキテクチャ(IPCの向上)は凄まじく、第8世代i7は第12世代i3と同等か、タイトルによってはやや劣る場合があります。しかし、マルチコアを活用するゲームや、バックグラウンドでDiscordや配信ソフトを動かす場合は、物理6コアを持つi7-8700に分があるケースもあります。

3-3. クリエイティブ用途(動画編集・画像処理)

判定:【フルHD編集は快適 / 4Kは工夫が必要】

  • Adobe Premiere Pro / DaVinci Resolve: フルHD(1080p)の動画編集であれば、カット編集、テロップ入れ、軽いエフェクト処理はサクサク動きます。i7-8700に内蔵されているGPU機能「Intel Quick Sync Video (QSV)」は非常に優秀で、これを利用したハードウェアエンコード/デコードは、書き出し時間の短縮やプレビューの軽快さに大きく貢献します。 ただし、4K動画のマルチカム編集や、重いカラーグレーディングを行うと、明らかにカクつきが見られるでしょう。プロの現場でなければ「待てる範囲」ですが、時は金なりの現場では力不足です。

  • Adobe Photoshop / Lightroom: 高画素の写真現像(2400万画素クラス)なら問題ありませんが、5000万画素超えのRAW現像を大量に行う場合、最新CPUとの処理速度差(書き出し時間)は2倍以上になることもあります。趣味レベルなら十分許容範囲です。


第4章:Core i7-8700のメリットとデメリット(2025年視点)

ここで改めて、今このCPUを使う、あるいは選ぶことの良し悪しを整理します。

メリット

  1. Windows 11正規対応の安心感 前述の通り、これが最大の強みです。裏技を使わずにOSアップデートを受けられるため、2025年以降もセキュリティ面で安心してネットワークに接続できます。

  2. DDR4メモリの安さと再利用性 対応メモリであるDDR4は、市場に潤沢にあり、価格も底値です。32GBや64GBへの増設が容易で、コストパフォーマンスに優れます。

  3. 中古市場でのコストパフォーマンス 市場にはリースアップ(企業利用期間終了)したi7-8700搭載の法人向けPC(Dell OptiPlexやHP EliteDeskなど)が大量に出回っています。これらにグラフィックボードを追加するだけで、安価なゲーミングPCが作れるため、自作派や改造派には宝の山です。

  4. 安定した熱設計 TDP 65W(PL2はもっと高いですが)で、最近のCore i7(13700Kや14700Kなど)のような「簡易水冷必須」というほどの爆熱ではありません。空冷クーラーで十分運用でき、扱いやすいCPUです。

デメリット

  1. アップグレードパス(将来性)がない これが最大の弱点です。i7-8700が使用するLGA1151v2ソケット(Z370/H370/B360チップセット)は、第9世代(i9-9900Kなど)までしか対応していません。i9-9900Kは中古価格が高騰し続けているため、実質的にi7-8700からの現実的なアップグレード先が存在しません。これ以上の性能を求めるなら、マザーボードごとの交換が必要です。

  2. NVMe SSDの速度制限(PCIe Gen 3.0) この世代はPCIe Gen 3.0までしか対応していません。現在主流のGen 4.0(最大読込7000MB/s超)のSSDを挿しても、Gen 3.0(最大3500MB/s程度)の速度で頭打ちになります。実用上体感差は少ないですが、スペック重視の人には不満点です。

  3. Windows 11での挙動の重さ Windows 10では軽快でも、Windows 11はOS自体がややリッチになっているため、バックグラウンド処理などで第8世代CPUだと「一瞬のもたつき」を感じることが稀にあります。

  4. 消費電力対性能(ワットパフォーマンス)の悪化 最新のCPUは「高効率コア(Eコア)」を搭載しており、低負荷時の省電力性が優秀です。i7-8700はアイドル時こそ低いですが、中負荷時のワットパフォーマンスは現代のCPUに見劣りします。


第5章:ターゲット別アドバイス

1. 【購入を検討している人へ】

今からi7-8700搭載PCを買うべきなのは、以下のようなケースに限られます。

  • 予算が極端に限られている(PC本体に3~5万円しか出せない)。

  • 中古の法人PCをベースに、安価なゲーミングPCを自作したい。

  • サブ機や子供用のPCとして、とにかく安くWindows 11環境を用意したい。

購入時の注意点: もし中古で購入する場合、CPU単体価格が10,000円〜12,000円程度なら検討の余地があります。しかし、マザーボードとセットで2万円を超えるようなら、新品のCore i3-12100FとH610マザーボードのセット(合計約2万円強)を買ったほうが、性能もアップグレード性も上です。「i7というブランド名」に惑わされず、実質性能(i3-12100同等)で価格を判断してください。

2. 【現在使っている人へ】

今、手元にi7-8700があるなら、**「壊れるまで使い倒す」**のが正解です。

  • 延命措置のすすめ:

    • メモリ増設: まだ8GBや16GBなら、32GBに増設してください。DDR4メモリは安いです。これだけでWindows 11の快適度が劇的に変わります。

    • ストレージ確認: もしCドライブがSATA SSDやHDDなら、M.2 NVMe SSD(Gen3でOK)に換装してください。OSの起動やアプリの立ち上がりが別次元になります。

    • CPUグリスの塗り直し: 購入から5年以上経過しているはずです。グリスが乾いて熱暴走気味になっている可能性があります。塗り直すだけでブーストクロックが安定し、ファンも静かになります。

買い替えのタイミング: 4K動画編集を本格的に始めたくなった時、あるいは最新の重量級ゲーム(Unreal Engine 5採用タイトルなど)を最高画質で遊びたくなった時が買い替え時です。それまでは、i7-8700はあなたの頼れるパートナーであり続けます。


第6章:限界と将来性(2025年~2028年予測)

6-1. アプリケーションの要求スペック上昇

2025年以降、AI機能(Microsoft Copilotなど)がOSやアプリに標準搭載されるようになります。これらのAI処理の一部はNPU(Neural Processing Unit)を必要としますが、i7-8700にはNPUがありません。すべてCPUパワーで処理することになるため、AI機能を多用するシーンでは、最新PCに比べて動作が重くなる可能性があります。

6-2. Windows 12(仮)への対応

噂される次期Windows(Windows 12?)では、システム要件がさらに引き上げられる可能性があります。もし「第10世代以降」などで線引きされた場合、i7-8700はそこでOSサポートの命運が尽きます。しかし、Windows 11のサポート自体はしばらく続くため、少なくとも2028年頃までは、セキュリティパッチを受け取りながら「安全なインターネット端末」として機能するでしょう。

6-3. エコシステムとしての限界

USB Type-C(Thunderbolt含む)やWi-Fi 6E/7といった最新規格への対応は、マザーボード側に依存します。300シリーズチップセットのマザーボードでは、これらの最新インターフェースをネイティブでサポートしていないことが多く、周辺機器の利便性において古さを感じる場面が増えてくるはずです。


結論:i7-8700は「賢者の石」か「終わったコンテンツ」か?

2025年において、Core i7-8700は**「賢者の石(=使い手次第で価値を生む)」**です。

最新のハイエンドPCと比較すれば、その性能差は歴然です。しかし、一般的なPCユーザーの9割が行う作業(Web、Office、動画視聴、軽いゲーム)において、i7-8700は依然として必要十分なパフォーマンスを提供します。

特に「Windows 10終了問題」を低コストで乗り切るための手段として、このCPUの存在価値は非常に高いです。

  • 新品を買う予算はないが、性能には妥協したくない人

  • 今あるPCを長く大切に使いたい人

こういった人々にとって、i7-8700は2025年以降も輝き続ける「名機」であり続けるでしょう。最新だけが正義ではありません。自分の用途を見極め、このCPUが持つポテンシャルを最大限に引き出すことこそが、最も賢いPCとの付き合い方と言えるのではないでしょうか。

もし今、あなたのPCの中にCore i7-8700が入っているなら、胸を張ってください。それはまだ、現役バリバリの優秀な頭脳です。

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