2017年の発売当時、「6コア化」によって革命をもたらした名機、Intel Core i5-8400。
発売から長い年月が経過し、CPU市場は第12世代、第13世代、そしてCore Ultraへと進化を続けています。しかし、中古市場や既存のビジネスPCにおいては、依然としてCore i5-8400は大きな存在感を放っています。
特に重要な転換点となるのが、**2025年10月14日の「Windows 10 サポート終了」**です。
この記事では、Windows 11に正式対応する「第8世代(Coffee Lake)」の代表格であるi5-8400が、2025年以降も通用するのか? その性能、メリット・デメリット、そして「今買うべき人・手放すべき人」への具体的アドバイスを、5000文字以上のボリュームで徹底解説します。
第1章:Core i5-8400の基本スペックと「第8世代」の重要性
まず、Core i5-8400がどのようなCPUなのか、現代の視点からスペックを振り返ります。
1-1. 基本スペック一覧
| 項目 | Core i5-8400 スペック | 現代の同等クラス (目安) |
| アーキテクチャ | Coffee Lake (14nm++) | – |
| コア/スレッド数 | 6コア / 6スレッド | Core i3-12100 (4C/8T) |
| ベースクロック | 2.80 GHz | – |
| ブーストクロック | 4.00 GHz | – |
| キャッシュ (L3) | 9 MB | – |
| TDP | 65 W | – |
| メモリ | DDR4-2666 対応 | DDR4/DDR5 |
| 内蔵グラフィックス | Intel UHD Graphics 630 | UHD 730/770 |
| ソケット | LGA1151 (300シリーズ) | LGA1700 / LGA1851 |
1-2. 歴史的背景:4コアから6コアへの大転換
Core i5-8400は、Intelにとって非常に重要な転換点となったCPUです。第7世代(Kaby Lake)までのCore i5は「4コア/4スレッド」が長年の定番でした。しかし、AMD Ryzenの台頭に対抗するため、第8世代で一気に**「6コア/6スレッド」**へと物理コア数を増やしました。
この「物理6コア」という特性こそが、i5-8400が長寿命である最大の理由です。4コアのCPUが現代のマルチタスク環境で息切れする中、6コアあることで、最低限の快適性を保てているのです。
1-3. 2025年問題:Windows 11 正式対応の「境界線」
2025年において、i5-8400が持つ最大の価値は**「Windows 11に正式対応している最も古い(=安価な)世代のCore i5である」**という点に尽きます。
MicrosoftはWindows 11のシステム要件として、原則「第8世代Intel Core以降」を指定しています。つまり、性能的には大差がない第7世代(Core i7-7700など)は切り捨てられましたが、i5-8400は生き残りました。
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2025年10月以降も安全にインターネットに接続できる
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企業のセキュリティ要件を満たせる
この一点において、i5-8400搭載PCは、i7-7700搭載PCよりも遥かに高い「実用寿命」を持っています。
第2章:2025年の用途別パフォーマンス検証
では、実際に2025年のソフトウェア環境でどれくらい「使える」のでしょうか? 用途別に検証します。
2-1. 一般事務・Webブラウジング・動画視聴
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判定:◎(非常に快適)
Excel、Word、PowerPointなどのOffice作業、ZoomやTeamsによるビデオ会議、ブラウザでタブを20個ほど開くといった作業において、i5-8400は全く問題ありません。
現代のエントリークラス(CeleronやN100など)と比較しても、i5-8400の方がキビキビ動く場面が多いです。特に高ビットレートの4K動画再生(YouTubeなど)も、内蔵GPUの再生支援機能(QSV)が効くためスムーズです。
条件:
ただし、ストレージがHDD(ハードディスク)では動作が重すぎて話になりません。「SATA SSD」または「M.2 NVMe SSD」への換装が必須条件です。メモリも最低8GB、できれば16GBあれば、2025年でも「サクサク動く」と感じるでしょう。
2-2. クリエイティブ作業(動画編集・画像編集)
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判定:△(フルHDなら可、4Kは厳しい)
画像編集(Photoshopなど):
趣味レベルの写真編集やバナー作成なら十分可能です。プロが数百枚のRAW現像を一括処理するような用途でなければ、ストレスは少ないでしょう。
動画編集(Premiere Proなど):
フルHD(1080p)のカット編集やテロップ入れ程度ならこなせます。しかし、4K動画の編集や、幾重にもエフェクトを重ねる作業は非常に重くなります。プレビューがカクつき、書き出し時間も最新CPUの数倍かかります。
「これからYouTubeを始めたい」という初心者の練習用としては使えますが、本格的なYouTuberを目指すなら力不足です。
2-3. PCゲーム(ゲーミング用途)
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判定:△ ~ ×(タイトルとGPUによる)
ここが最も意見が分かれる部分です。結論から言えば、**「最新の重量級ゲームは厳しいが、軽めのeスポーツタイトルなら遊べる」**という位置づけです。
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VALORANT / League of Legends / Overwatch 2:
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これらの軽量級ゲームであれば、GTX 1660 SuperやRTX 3050程度のエントリーGPUと組み合わせることで、144fps以上の快適なプレイが可能です。
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Apex Legends / Fortnite:
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設定を落とせば100fps~144fps付近を狙えますが、混戦時にフレームレートが急落する「スタッター(カクつき)」が発生しやすくなります。これは6スレッドしかないことによるCPUの限界です。
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Cyberpunk 2077 / Starfield / Modern Warfare III:
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厳しいです。 GPUを高性能なもの(例:RTX 4060 Ti以上)にしても、CPUが足を引っ張る「ボトルネック」が発生し、GPUの性能を半分も引き出せないことがあります。常にCPU使用率が100%に張り付き、動作が不安定になります。
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第3章:Core i5-8400のメリットとデメリット
2025年視点でのメリットとデメリットを整理します。
3-1. メリット(Pros)
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Windows 11 正式対応の最安値クラス
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中古市場でPCを探す際、「Win11対応」というフィルターをかけると、最も安く手に入るのがこの世代です。企業のリースアップ品(中古ビジネスPC)が大量に出回っており、入手性が極めて高いです。
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物理6コアの安心感
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4コアCPUでは、Windowsのバックグラウンド処理(アップデートやウイルススキャン)が走るとPC全体が重くなることがありますが、6コアあると余力があり、操作不能になることが少ないです。
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発熱が穏やかで扱いやすい
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最近のIntel CPU(第13/14世代)は爆熱で、高価なCPUクーラーが必要ですが、i5-8400は発熱が少なく、標準クーラーや安価な空冷クーラーで十分冷えます。小型PC(Mini-ITX)やスリムタワーPCでも運用しやすいです。
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マザーボードの選択肢
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H310、B360、H370、Z370など、対応マザーボードが多く、中古パーツも見つけやすいです。
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3-2. デメリット(Cons)
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「ハイパースレッディング」非対応(6コア/6スレッド)
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ここが最大の弱点です。i5-8400は1つのコアで1つの処理しかできません。現代のCore i3(例:i3-12100)は4コアですが8スレッドで処理できるため、マルチスレッド性能では最新のi3に負けることがあります。
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アップグレードパス(将来性)がない
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i5-8400が使う「LGA1151v2」ソケットは、第9世代(Core i9-9900Kなど)までしか対応していません。もし性能不足を感じてCPUを交換したくても、第9世代の中古価格はプレミアがついており高額です。「CPUだけ交換して延命」というコスパの良い選択肢が実質ありません。
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DDR4メモリの速度制限
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B360などの普及帯マザーボードでは、メモリクロックが2666MHzに制限されます。最新の高速メモリを活かせません。
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Windows 12(仮)への対応懸念
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Windows 11には対応しましたが、将来出るかもしれない次期OSに対応するかは不透明(おそらく切り捨てられる可能性が高い)です。
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第4章:将来性と限界 ~いつまで使えるのか?~
「いつまで使えるか」という問いに対する答えは、**「用途を変えれば、ハードウェアが壊れるまで」**です。
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メインのゲーミングPCとして:
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2025年ですでに限界を迎えています。最新ゲームを楽しみたいなら買い替え必須です。
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メインの事務・家庭用PCとして:
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2028年頃までは余裕でしょう。Web閲覧やOfficeソフトの要求スペックが急激に上がることは考えにくいです。Windows 11のサポートが続く限り現役です。
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サブ機・子供用・リビングPCとして:
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2030年以降も活躍できます。Linuxを入れたり、ファイルサーバー(NAS)にしたり、軽いプログラミング学習用にするなど、物理6コアのパワーは腐っても「Core i5」です。
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限界を感じる瞬間
「CPU使用率が常に100%に近い」「アプリの切り替えで数秒待たされる」「ゲーム中に一瞬画面が止まる」。これらの症状が出たら、i5-8400の限界です。設定でどうにかなる問題ではなく、物理的な処理能力不足です。
第5章:タイプ別アドバイス
5-1. 【購入検討者へ】今からi5-8400搭載PCを買ってもいい?
条件付きで「YES」です。
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買うべきケース:
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予算が極端に限られている(PC本体で3万円以下)。
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事務作業、Web閲覧、動画視聴がメイン。
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子供のマインクラフト(統合版)やRoblox用に使いたい。
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「とりあえずWindows 11が動けばいい」。
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買ってはいけないケース:
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予算が5万円以上ある(→ 第12世代 i3やRyzen 5 5600搭載機を探すべき)。
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最新の3Dゲームを高画質で遊びたい。
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動画編集を仕事にしたい。
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5年以上、メインPCとして使い続けたい。
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注意点:
中古市場には「Core i7-6700 / i7-7700」搭載機も多く並んでいますが、これらはWindows 11非対応です。価格が近くても、必ず「i5-8*(8000番台)」以降を選んでください。**
5-2. 【現在使用者へ】使い続けるべき? 買い替えるべき?
現在i5-8400を使っていて、特に不満がないのであれば、無理に買い替える必要はありません。 壊れるまで使い倒すべき名機です。
アップグレードの指針:
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動作が遅いと感じる場合:
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まず、HDDを使っていませんか? SSDに換装するだけで劇的に速くなります。
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メモリは8GBですか? 16GBに増設すると世界が変わります。
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これらを試しても遅いなら、買い替え時です。
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ゲーム性能を上げたい場合:
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グラフィックボードがGTX 1060以前なら、RTX 3060等に変える効果はあります。しかし、CPUがボトルネックになり、GPU性能の30~40%が無駄になる覚悟が必要です。
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思い切って「CPU + マザーボード + メモリ」の総入れ替え(プラットフォーム刷新)をおすすめします。Core i5-13400FやRyzen 5 7600などに変えると、同じグラボでもフレームレートが倍増することもあります。
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第6章:まとめ ~i5-8400は「最後の砦」~
Core i5-8400は、2025年において**「快適にWindows 11を使える最低ライン(ボトムライン)」**として、非常に重要な位置にいます。
かつてのハイエンドには敵いませんし、最新のエントリーモデルにも負ける部分はあります。しかし、**「物理6コア」という地力と、「Windows 11公式サポート」**という資格を持っているため、単なるゴミ(E-waste)になるにはまだ早すぎます。
結論:
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事務・普段使いなら: 2025年以降もバリバリの現役。コスパ最強の選択肢。
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ゲーマー・クリエイターなら: 敬意を表して引退(サブ機へ移行)させるべき時期。
あなたのPCライフの予算と目的に合わせて、この「名機」とどう付き合うか決めてみてください。

