【2025年版】RX 5700は「オワコン」なのか? 性能と限界を徹底解説
2025年、秋。ゲーミングPCの世界では、NVIDIAのRTX 50シリーズの噂が飛び交い、AMDもRDNA 4アーキテクチャの次世代機を準備していると報じられています。PS5やXbox Series Xが発売されてから早5年。ゲームのグラフィックスは「レイトレーシング(RT)」や「AIによる超解像」が当たり前の時代に突入しました。
そんな中、2019年夏に「RDNA 1」アーキテクチャと共に鳴り物入りで登場したRadeon RX 5700に、今も価値はあるのでしょうか?
発売当時は、NVIDIAのGeForce RTX 2060 Superの対抗馬として、高いラスタライズ性能(従来の描画性能)と8GBのVRAM、そしてPCIe 4.0への早期対応で注目を集めた名機です。
あれから6年。この古き戦士は、2025年の最新ゲームやクリエイティブ用途に、まだ通用するのでしょうか?
この記事では、RX 5700を「2025年の今」という視点から徹底的に再評価します。中古での購入を検討している方、そして今も現役で使っているオーナーの方、それぞれに向けた具体的なアドバイスまで、5000文字以上で深く掘り下げていきます。
結論から言えば、RX 5700は**「条件付きの現役」**です。万人向けではありませんが、その驚異的なコストパフォーマンスは、特定のユーザーにとって依然として輝きを放っています。
1. 2025年におけるRX 5700のリアルな性能
まず、RX 5700が2025年のPC環境でどの程度の位置にいるのかを把握しましょう。
ターゲットは「フルHD (1080p)」一択
2025年現在、ゲーミングモニターの主流は1440p (WQHD) や4Kへと移行しつつあります。しかし、RX 5700にとって、これらの高解像度は「デスクトップ作業・動画視聴用」と割り切るべきです。
ゲーミングにおける現実的なターゲットは、フルHD (1920×1080) のみです。
ラスタライズ性能:まだ「ミドルクラス」の意地
RX 5700が搭載するRDNA 1アーキテクチャは、純粋な描画性能(ラスタライズ)において非常に優秀でした。2025年現在、その性能はどこに位置するのでしょうか?
- 最新世代との比較: 現行のミドルレンジ(RX 7600やRTX 4060)には及びません。これらのカードは、より少ない消費電力でRX 5700を上回る性能を発揮します。
- エントリークラスとの比較: 現行のエントリークラス(RTX 4050やRX 7500 XTなど)とは、ほぼ同等か、タイトルによっては上回ります。
驚くべきことに、RX 5700の純粋なパワーは、6年経った今でも最新のエントリーGPUとタメを張れるレベルにあります。これは、PCゲームの要求スペックが(特にラスタライズ性能において)緩やかになってきたことも影響しています。
VRAM 8GBの「壁」という最大の試練
RX 5700が直面する最大の問題。それは**8GBのVRAM(ビデオメモリ)**です。
2019年当時は「十分すぎる」と言われた8GBですが、2025年では**「AAAタイトルの最低ライン」**です。
PS5やSeries Xが10GB以上のVRAMをゲーム領域で使用できるようになった結果、PCゲームも高解像度テクスチャを大量に読み込むようになりました。
- 2025年のAAAタイトル (例: Cyberpunk 2077 最終版, Starfield 大型DLC, GTA 6 PC版 [仮]):
- 1080pであっても、グラフィック設定を「高」や「ウルトラ」にすると、VRAM使用量はいとも簡単に8GBを超過します。
- VRAMが溢れると、**激しいカクつき(スタッタリング)**や、テクスチャの読み込み遅延(粘土のようなグラフィック)が発生し、ゲームプレイが困難になります。
このため、RX 5700で最新ゲームを遊ぶ際は、「テクスチャ品質」を「中」または「低」に設定することが必須の妥協点となります。
レイトレーシング (RT):完全な「無」
RX 5700のもう一つの致命的な弱点。それはレイトレーシング(RT)にハードウェアレベルで対応していないことです。
RDNA 1アーキテクチャには、RT処理専用の「RTコア」が搭載されていません。ソフトウェアベースでの処理は可能ですが、フレームレートは1桁台に落ち込み、実用性は皆無です。
2025年現在、多くのゲームがRTを前提とした美しいライティング(特にAlan Wake 2のようなタイトル)を採用しており、中にはRTをオフにできない(またはRTが必須の)設定モードも存在します。
RX 5700では、これらの最新の視覚体験を完全に諦める必要があります。
救世主「FSR (FidelityFX Super Resolution)」
RX 5700が2025年でも「戦える」と評される最大の理由。それがAMDのアップスケーリング技術**「FSR」**です。
- FSR 2 / FSR 3: RX 5700はNVIDIAのDLSS(AIベース)には対応していませんが、FSR(シェーダーベース)には完全対応しています。
- 延命措置: 内部解像度を下げ(例: 720p)、それを1080pに賢く引き伸ばすことで、画質の低下を最小限に抑えつつ、フレームレートを劇的に向上させます。
- FSR 3 (Frame Generation): さらに、FSR 3の「フレーム生成」技術も利用可能です。これは、AI(機械学習)を使わずにフレームとフレームの間に新しいフレームを挿入する技術です。DLSS 3のフレーム生成ほど高品質ではありませんが、対応ゲームであれば、RX 5700のフレームレートを(例えば40fpsから60fpsへ)と、劇的に引き上げることが可能です。
FSRは、RX 5700にとってまさに「延命装置」であり、このカードの寿命を2〜3年延ばしたと言っても過言ではありません。
2. 2025年における主な用途
では、上記の性能を踏まえて、RX 5700は2025年に具体的に何ができるのでしょうか?
🎯 用途①:1080p・FSR前提のAAAゲーミング
これがRX 5700の主戦場です。
- 最新AAAタイトル (2024〜2025年発売):
- 解像度: 1080p
- 全体設定: 「低」〜「中」
- テクスチャ: 「低」または「中」(VRAM 8GBの壁のため)
- レイトレーシング: オフ
- FSR: **「クオリティ」または「バランス」**に設定
- 目標フレームレート: 平均45〜60fps
- 少し前のAAAタイトル (2020〜2023年発売):
- Elden Ring, Hogwarts Legacy, RE:4 Remake など。
- 設定: 1080p「中」〜「高」(テクスチャは「中」推奨)
- FSR: オン(またはオフでも可)
- 目標フレームレート: 快適な60fps以上
設定を妥協し、FSRを積極的に活用する。この「設定をいじる」行為を楽しめるユーザーであれば、最新ゲームも十分に遊べます。
🎯 用途②:eスポーツ・軽めのゲーム
- Valorant, Apex Legends, Counter-Strike 2, League of Legends, FFXIV
- これらのゲームは、RX 5700にとって**「余裕」**です。
- 1080pであれば、設定をかなり上げても144fpsや240fpsといった高フレームレートを維持でき、ハイリフレッシュレートモニターの性能を十分に引き出せます。
- eスポーツタイトルがメインのユーザーにとっては、2025年でも全く買い換える必要のない性能を持っています。
🎯 用途③:クリエイティブ作業(条件付き)
- 動画編集 (Premiere Pro, DaVinci Resolve):
- RDNA 1のビデオエンコーダー (VCN) は優秀で、H.264/H.265 (HEVC) のハードウェアエンコード・デコードに対応しています。
- 1080p編集や、4Kの簡単なカット編集であれば、2025年でも問題なくこなせます。
- ただし、VRAM 8GBは4K編集や高度なエフェクト(FusionやAfter Effects)を多用すると、すぐに限界に達します。
- 3Dレンダリング (Blenderなど):
- 不向きです。
- NVIDIAのCUDAやOptiX(RTコア使用)に最適化されたレンダラーが主流であり、AMDのOpenCLやHIPは対応・性能面で大きく劣ります。RT非対応なのも致命的です。
- AI・機械学習:
- 絶望的です。
- NVIDIA (CUDA / Tensorコア) の独壇場であり、RX 5700は学習用途には使えません。
3. メリットとデメリット(2025年視点)
2025年にRX 5700を選ぶ(または使い続ける)ことの利点と欠点を整理します。
🟢 メリット
- 圧倒的な中古価格(コストパフォーマンス)
- 最大のメリットです。2025年後半現在、RX 5700の中古市場価格は1万円前後、時には1万円を切る水準まで下落しています。
- 1万円で「1080p・FSR込みで最新ゲームが遊べる」性能が手に入るのは、破格のコストパフォーマンスと言えます。
- FSRによる延命
- FSR 1, 2, 3にフル対応しているため、設定次第で最新ゲームにも食らいついていけます。
- eスポーツでの高いパフォーマンス
- 軽いゲームであれば、現行のハイリフレッシュレートモニターを活かしきれます。
- VRAM 8GB(エントリークラス比)
- 現行のエントリーGPU(RTX 3050 6GB版や、将来のRTX 4050 6GB版など)と比較した際、VRAMが8GBあることは明確なアドバンテージです。(ただし、前述の通りAAAゲームではギリギリですが)
🔴 デメリット
- レイトレーシング非対応
- 最新ゲームの「ウリ」である美しいグラフィックスを体験できません。これは、もはや「画質設定」ではなく「機能の欠如」です。
- VRAM 8GBの限界
- テクスチャ設定を「低〜中」に強制されるため、高精細なグラフィックを楽しめません。常にVRAM残量を気にする必要があります。
- 最新世代に劣る消費電力
- TBP (Total Board Power) は約180W。同等以上の性能を持つ現行のRX 7600 (165W) やRTX 4060 (115W) と比較すると、ワットパフォーマンス(電力効率)は非常に悪いです。
- ドライバサポートの縮小懸念
- 発売から6年が経過し、アーキテクチャも3世代前(RDNA 1 → 2 → 3)となりました。いつAMDの最新ドライバサポート(ゲーム最適化)の対象外になってもおかしくありません。
4. 将来性と限界
RX 5700の「寿命」はいつ来るのでしょうか?
限界:すでに見えている「壁」
- RTの壁: レイトレーシングが必須、あるいはRTを前提としたゲームデザインが主流となった時、RX 5700は完全に「遊べない」カードになります。
- VRAMの壁: 2026年以降、次世代コンソール(PS6世代)の足音が聞こえ始めると、ゲームの最低要求VRAMが8GBを超える可能性があります。そうなれば、RX 5700は設定を「最低」にしても起動すら厳しくなります。
- 新技術の壁: Mesh ShadersやAI処理の比重が高まるDirectX 13 (仮) のような新しいAPIが登場した際、RDNA 1は最適化の対象外となるでしょう。
将来性:FSR 3が最後の砦
RX 5700の将来性は、**「FSR 3(フレーム生成)の普及」**に懸かっています。
もしFSR 3が多くのゲームで標準サポートされれば、RX 5700は「1080p 低設定 + FSR 3」で、平均60fpsを維持し続ける「ゾンビ」のようなカードとして、あと1〜2年は生き残れるかもしれません。
しかし、その延命も2026年が限界でしょう。2025年は、まさに**「RX 5700がギリギリ戦える最後の年」**と言えます。
5. 【購入検討者へ】2025年に中古のRX 5700は「買い」か?
2025年に、あえて中古のRX 5700を買うべき人、そうでない人をまとめます。
🛒 買うべき人
- 予算が1万〜1.5万円しかない人:
- この価格帯で1080pゲーム(FSR込み)を動かせるGPUは、他にほとんどありません。
- eスポーツ(Valorant, Apexなど)がメインの人:
- オーバースペックなほど快適です。最高の選択肢の一つです。
- 「設定をいじる」のが苦ではない人:
- 最新ゲームを遊ぶには、テクスチャ、影、FSRなど、多くの設定を試行錯誤する必要があります。
- 一時的な「つなぎ」のGPUが欲しい人:
- RTX 50シリーズやRDNA 4の登場を待つ間、安価にPCを動かしたい場合に適しています。
🛒 買うべきではない人
- 「快適」に最新ゲームを遊びたい人:
- VRAM不足によるスタッターや、RT非対応による画質の妥協は、決して「快適」とは言えません。
- 予算が2万〜3万円ある人:
- 予算をあと1万円足せば、中古のRX 6600やRTX 2060 Super / 2070が視野に入ります。
- 特にRX 6600は、同等のラスタライズ性能、ハードウェアRT対応(おまけ程度ですが)、そして圧倒的に優れた電力効率(約130W)を持っており、RX 5700より遥かに賢い選択です。
- クリエイティブ用途をメインに考えている人:
- 動画編集ならまだしも、3DやAIは絶望的です。素直にNVIDIAのGPU(中古のRTX 3060 12GB版など)を探すべきです。
⚠️ 中古購入時の注意点
- マイニング需要: RX 5700は、2020〜2021年のマイニングブームで酷使された個体が大量に市場に流れています。
- 確認事項:
- ファンの異音: 高負荷時にファンが異常な音を立てないか。
- サーマルパッド/グリス: 6年経過しているため、冷却性能が落ちている可能性が高いです。購入後にセルフメンテナンス(グリス塗り替えなど)ができる知識があることが望ましいです。
6. 【現役オーナーへ】RX 5700はいつ買い替えるべきか?
現在RX 5700を愛用している方へ。買い替えのタイミングはいつでしょうか?
🚀 アップグレードを推奨する人
- 1440pや4K解像度に移行したい人:
- 即時アップグレードすべきです。RX 5700では1440pゲーミングは不可能です。
- レイトレーシングを体験したい人:
- RTの有無は、もはや別次元の体験です。RTX 4060やRX 7600 XT(16GB)など、VRAMの多いミドルクラスへの乗り換えを強く推奨します。
- VRAM 8GBの限界にイライラしている人:
- 「テクスチャを中に落とす」という妥協にストレスを感じているなら、VRAM 12GBや16GBのGPU(RTX 4060 Ti 16GB版やRX 7700 XTなど)が次のターゲットです。
- 消費電力やファンの音が気になる人:
- 最新のGPUは電力効率が劇的に改善しています。静音性と省電力性を求めるなら買い替え時です。
😌 まだ使い続けても良い人
- eスポーツや軽いゲームがメインの人:
- 全く問題ありません。壊れるまで使い倒しましょう。
- 1080p + FSR + 設定妥協で満足している人:
- 「遊べれば良い」というスタンスであれば、RX 5700はFSR 3の力でまだ戦えます。
- PCゲームにあまりお金をかけたくない人:
- 無理に買い替える必要はありません。完全に「遊べない」ゲームが出てきてから(おそらく2026年頃)考えれば十分です。
🛠️ オーナー向けの延命テクニック
- FSR 3 (Frame Generation) の活用:
- 対応ゲームでは積極的にオンにしましょう。ただし、ベースのフレームレートが低い(30fps未満)と、遅延が目立つ場合があります。
- AMD Fluid Motion Frames (AFMF):
- AMDドライバ側で強制的にフレーム生成を行う機能です。FSR 3非対応ゲームでも使えますが、UIが乱れるなどの副作用もあるため、ゲームごとに試してみる価値はあります。
- サーマルグリスの塗り替え:
- 6年間の使用で冷却性能が低下しているはずです。グリスを塗り替えるだけで、冷却効率が戻り、パフォーマンスが安定する(サーマルスロットリングが起きにくくなる)可能性があります。
7. 結論:RX 5700は「設定と戦う」玄人向けの遺産
2025年という時代において、Radeon RX 5700は**「万人向けの選択肢」では断じてありません**。
レイトレーシング非対応、8GB VRAMの限界、高い消費電力——。最新のゲーム体験を求めるユーザーにとっては、明確な「オワコン(終わったコンテンツ)」です。
しかし、その一方で。
1万円前後という驚異的な中古価格で手に入り、FSRという現代の魔術を駆使し、設定を徹底的に切り詰めることで、2025年の最新AAAタイトルに(ギリギリとはいえ)食らいついていける**「驚異的なコストパフォーマンスの怪物」**でもあります。
RX 5700は、RDNA 1アーキテクチャがいかに優れた設計であったかを証明する、生きた化石であり、偉大な遺産です。
あなたがもし、最低限の予算でPCゲームの世界に足を踏み入れたい「チャレンジャー」であるか、あるいは設定をいじくり回すこと自体に喜びを見出す「玄人」であるならば、この古き戦士は、2025年の今でも最高の相棒となってくれるでしょう。

